世界詐欺最前線世界の詐欺ニュースと手口を毎日更新
トップに戻る
フィッシング公開日: 2026年7月31日アルゼンチン

銀行とフィッシング詐欺被害者の責任割合を判断 アルゼンチン高等裁判所の判例

アルゼンチンの商業控訴裁判所は、フィッシング詐欺により約214万ペソを失った顧客と銀行の責任を分析した判決を下しました。詐欺師は遠隔操作ツールへのアクセスを得て9件の送金を実行しましたが、裁判所は銀行の監視システムが不十分であった一方、顧客も不審な指示に従った過失があると判断し、責任を銀行80%、顧客20%と配分しました。

詐欺の手口と経緯

2023年3月、被害者がVisaカード関連の問題について問い合わせようとしました。通常のサポート窓口が応答しなかったため、Google検索で「Visa顧客対応」の番号を探しました。検索結果から得た番号を使い、WhatsAppで連絡を取った相手(実は詐欺師)は、テクニカルサポートオペレーターを名乗り、TeamViewerというリモートアクセスアプリケーションのインストールを要求しました。

被害者がこの指示に従うと、詐欺師は被害者のスマートフォンを遠隔操作でき、1時間半で11人の新しい送金先を追加し、9件の送金(計198万ペソ)を実行しました。

銀行側の主張

銀行は以下の点を強調しました:

  • 自社のシステムは侵害されていない
  • 送金は被害者の正規の認証情報を使用して実行された
  • TeamViewerのようなアプリのダウンロード要求は銀行が行わない
  • 同種の詐欺に対する定期的な警告キャンペーンを実施している

一審判決

一審裁判官は、銀行が中央銀行の規制する適切なセキュリティ水準を満たしていないと判断しました。法廷鑑定により、詐欺当日の取引は被害者の通常の行動パターンと全く異なることが判明。短時間に複数の新規送金先と連続送金が実行されたにもかかわらず、銀行の監視システムがこれを検出できなかったことが問題とされました。一審は銀行に全額返金と80万ペソの慰謝料を命じました。

控訴審の判断

控訴裁判所は銀行の消費者保護法違反を確認しつつも、より詳細な分析を行いました:

顧客の過失: 被害者がインターネットで電話番号を検索し、不明確な相手とWhatsAppで連絡し、リモートアクセスツールをダウンロードしたという行動は、詐欺師の成功を容易にしたと判断されました。TeamViewerは使用者が明示的に接続を承認し、遠隔操作を有効化した場合のみ機能します。

銀行の過失: 以下の点で銀行の責任を認定:

  • セキュリティアラートが送金実行数時間後に送信されたこと
  • 事前に取引の妥当性を確認する代替メカニズムが機能していなかったこと
  • 11人の新規送金先追加と2時間以内の9件連続送金という明らかに異常な動きを検出しなかったこと
  • 詐欺進行中に顧客が何度も銀行に連絡しようとしたが即時対応がなかったこと

責任配分の結論

裁判所は「併合過失」の原則に基づき、顧客の行動と銀行の不作為の双方が詐欺実行に決定的な役割を果たしたと結論づけました。その結果、責任を銀行80%、顧客20%と配分し、返金額を158万4,032ペソに調整しました。慰謝料は維持されました。

今後の影響

この判決は今後のオンライン詐欺事件の先例となる可能性があります。従来は銀行に全責任を負わせる判決が多かったですが、本判決は顧客の注意義務の重要性を強調しました。同時に、銀行の義務は免除されず、取引監視システムの強化、異常検知の即時化、迅速なブロック機能の提供などが引き続き必須であることを示しています。

利用者が取るべき対策

  • 銀行やクレジットカード会社の公式サイトに掲載された連絡先のみ使用する
  • Google検索やSNSから得た連絡先は使わない
  • TeamViewerやAnyDeskなどのリモートアクセスアプリのダウンロード要求には応じない
  • パスワード、トークン、認証コードを共有しない
  • 銀行からのセキュリティアラートを定期的に確認する
  • 不審な点に気づいたら直ちに銀行に連絡し、口座をブロックして警察に届け出る

本判決は、顧客の警戒心強化と銀行の技術的対策の双方が詐欺防止に不可欠であることを示しています。

情報源: iProfesional

シェア